【コラム】第4回:今日、何食べる?

母方の祖父母が東北出身だったこともあり、濃い味付けに慣れていた編集です。
しかしながら進学先が関西だったことや奥さんが関西人ということもあり、徐々に薄味にも慣れてきました。
味覚って変わるんです。
我々、あん摩マッサージ指圧師が職業柄意識する”心地いい”の感じ方と、食の”美味しい”の感じ方ってかなり似ているのかもしれません。
そんなことを感じずにはいられない、管理栄養士兼あん摩マッサージ指圧師のあんとん先生による食事コラム第4回目!!
テーマは「味覚の秘密」です!どうぞお楽しみください!

皆さんこんにちは、管理栄養士兼あん摩マッサージ指圧師のあんとんです♪
前回は塩分についてお話させて頂きました。
そのことで思い出したことがあります。

味付けについて私は特に気を付けている訳ではないのですが、どうも薄味が基本となっているみたいです。というのも、ずっと昔、家族でお寿司屋さんに行った帰り道、義母に言われたんです。

「あんとんちゃんの味に慣れたから、お店の茶わん蒸しがしょっぱかった。」

お~!!
とはいえ自分としては出来得る限り濃い目に作っていたつもりだったので、そうか、薄いのかって気づかされました(笑)

と、同時に、「薄味って、慣れるようになるんだ」ってことを目の当たりにしました。
薄味っていうのはつまりは調味料を極力少なめに使用する、ということ。

その最大の利点は、「素材の味がよく分かる」ということです。

味を感じるメカニズム

飲食物を口に入れると、食品成分中の分子やイオンが溶出します。これらの化学物質(味物質)が舌にある「味蕾」で感知されて、その刺激が脳に伝わることで味を感じる仕組みになっています。

味蕾は字のごとくつぼみの形をしていて、1万個ほど舌に存在しています。水に溶けた化学物質は、味蕾の開口部から入って味細胞に作用していきます。その興奮が脳へ伝えられ、甘いだの、酸っぱいだのと感じます。

味細胞は基底細胞が味細胞に分化することで、常に新しい細胞に入れ替わっています。
皮膚のターンオーバーみたいな感じですね。
その周期は2週間と言われています。

味には感じる順番と”慣れ”がある!

味を感じるのに最低必要な刺激量のことを味覚閾値といいます。この閾値が大きいものから順に並べると、甘味、塩味、酸味、苦味となります。つまり、苦味が最も早く感じ取れる味ということになります。これは毒のような身体に悪いものには苦い味が多いため、危険を察知するために備わった防御機能とされています。

ところが、舌の一か所に食べ物をずっと載せていると、味の感じ方が弱くなってきます。
これを順応と言います。
ですから私たちは、舌を使って食べ物の場所を変えて味わっていると言われています。

味覚の順応には2つの要因が考えられていて、1つは受容器における感覚の減衰であり、もう1つは中枢における感覚の減衰と言われています。あん摩や鍼灸刺激などの触覚刺激にも似た様なことが言えそうです。

美味しさの秘密

美味しさは中枢、つまり脳で刺激を受け、美味しいとかまずいとかを感じます。

味覚が脳に伝わるのは、電気信号で神経を伝っていきます。なので、味蕾にある受容体の働きが正常であれば、一つ一つの味は脳に伝わっていきます。

ですが、私たちは塩だけをなめている訳ではなく、でんぷんの甘味や鰹節のうまみなど、複雑な味の組み合わせの中から「おいしさ」を感じています。
そしてそれらを幼少期から積み重ねた記憶によって、味覚が形成されると考えられているのです。
とくに甘い味や塩味には嗜好性が強いとされていますので、子供のころから濃い味付けに慣れてしまうと、薄い味付けは美味しくないと思ってしまうのかもしれませんね。

はたして味覚は変えられるのか?!

味覚を決める要素には、味の記憶が大きく関与していることと、『食べることで心が満たされる』という心理的な要素が絡んできます。

じゃあ無理じゃん!
と早々に諦めないでください。

興味深い研究があります。
それは、基本五味(甘味、塩味、苦味、酸味、旨味)の判別レベルは母子で違いがあるのか、また味覚の鋭敏さの差異の背景にはどのような要因があるのかを調べたものです。


<参考文献>
「味の記憶」の蓄積が味覚形成に影響していることが判明
日頃のちょっとした意識・行動で、今からでも味覚は向上できる!
“おいしい”をデザインする森永乳業が「風味パネルマイスター制度」の知見を活かし、
“味覚向上5か条”を提言
https://www.morinagamilk.co.jp/assets/release/1701.pdf

そこでは五味判別レベルが高い子どもは好き嫌いがなく、食への関心が高いという結果が出たそうです。また、子どもより母親のほうが味覚が鋭敏であることもわかりました。

母親が子供より鋭敏であるのは、それだけ食の経験が豊富だからではないかと。
原著のニュースレターもぜひ読んでみて下さい。

大人になっても食材や調味料を意識しながら食べていくことで、味のセンサー機能を発達させ、その新たな味の記憶が蓄積されていくことで、薄味にも慣れることができるのだと思います。

お義母さんはきっと嫌々だったでしょうけれど、日々薄味を食べることで慣らされていったのですね(笑)

<ライターProfile>
name:あんとん先生
とある管理栄養士
ある時はあん摩マッサージ指圧師
食と運動と手技療法の3本柱でフレイル予防を提唱している
ちなみに”あんとん”は飼っている猫の名前

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