母方の祖父母が東北出身だったこともあり、濃い味付けに慣れていた編集です。
しかしながら進学先が関西だったことや奥さんが関西人ということもあり、徐々に薄味にも慣れてきました。
味覚って変わるんです。
管理栄養士兼あん摩マッサージ指圧師のあんとん先生による、食事コラム第4回目のテーマは「味覚の秘密」です!どうぞお楽しみください!
管理栄養士が伝えたい”薄味のすゝめ”
こんにちは。あんとんです。
今回は調味料、特に塩についてお話ししてみたいと思います。
よく、病院の給食(入院食)は不味いと言われますね。
なぜかと言うと、一番の理由は「薄味」だからでしょう。
「日本人の食事摂取基準(2020)」では、男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満、高血圧の予防・治療のためには6グラム未満が目標値とされています。
そのため病院では、怪我で入院された方でも塩分量を7gくらいに設定しているところが多いのです。私が勤めていた病院でも、一般食で7gでした。病院は治療をする所ですが健康教育をする場でもあるので、給食を用いて薄味を知ってもらうという目的でそうなっています。
普段、私たちが摂取している塩分量はどれくらい?
では実際、私たちはどのくらいの塩分を摂取しているのでしょう。
令和元年(令和2~3年は実施せず)の国民健康・栄養調査では、日本人の食塩の平均摂取量が10.1g/日となっています。
摂取量は年々減少しているものの、まだまだ多いです。
WHOが推奨する塩分摂取量は5g/日。
一体どのくらい?っていうと、計量スプーンの小さじ1杯分が1日分です。
少なっ!!そんなんじゃフラフラしちゃうって思うでしょ?
でもね。そうでもないんだよね。
人間のカラダは少ない塩分量でも活動できるようにできている
塩は動物が生きていくためには必要不可欠な成分です。細胞の様々な活動に関わっている重要な物質です。生物が進化の過程で海から陸へ上がった時に、体内に十分な塩分を蓄えておける仕組み=アルドステロン1)を得たと言われています。
アルドステロンは腎臓から捨てられた塩分を再吸収して体内の塩分量を調節しています。こうして陸上動物は、わずかな塩分摂取量でも生き延びていくことができるのです。
さらにブラジルに生活しているヤノマモインディアンの調査で、食塩の摂取量が極端に少ないことが分かり、ヒトは1g程度の塩分摂取量で生きられるということが分かったのです。
1)アルドステロン:副腎皮質から分泌されるホルモンの一種。腎臓に働きかけてナトリウムの血液中への再吸収を促進しカリウムを排泄する。同時に膠質浸透圧により水分も再吸収される。血中ナトリウム濃度が低下した時は分泌が亢進される。
参考文献: 第3版 生理学,公益社団法人 東洋療法学校協会,医歯薬出版,2014
人は慣れる生き物だ
『え~!でも薄味なんて不味くて無理!!』
という声がバンバン飛んでくるのが目に浮かびますが、
味覚って、ぶっちゃけ「慣れ」です。
母乳って、飲んだことありますよね。
もうどんな味か忘れちゃっている方がほとんどだと思いますが。
あれ、大人になって舐めてみるとほぼ味がしなくて、何でこんな不味いものをゴクゴク飲めるの~?!って思うはず。
そう、私たちは離乳後の食事で塩気に慣らされちゃったんです。
いやいや、もう何十年も濃い味になれたら、薄味なんて無理でしょ!!と、思うあなた。こんなエピソードがあります。
元々薄味のあんとんは東北育ちの義母と同居する間、頑張って濃いめに料理を作っていました。数年後、家族でお寿司屋さんに行った際、せっかくなので茶碗蒸しもオーダー。皆でおいしくいただいた帰り道、義母がぽろっと一言「あんとんちゃんのご飯になれたら、お店の茶碗蒸しがしょっぱかったわ~。実は最初は味がないって思ったけど、今はちょうど良いのよね」って。
ヤッホー!
幾つになっても薄味の訓練はできるってことですね!!
これが極端な薄味訓練法だ!
最も極端な薄味訓練は、1ヶ月くらい味付けのない料理を作ること!!
これはあんとんが幼少期に罹った病気で実際にやった食事療法です。
もはや離乳食ばりの食事ですね。
そうはいっても元々は塩味大好きなあんとんですから、今でも減塩には気を配っていますよ。ほうれん草やサラダなどは何も付けなくても食べられますが、煮物には少しは味付けしないとね。
知っている方も多いかと思いますが、含め煮と煮っころがしでは、煮っころがしの方が低塩分で済みます。
中の方まで味が染みた含め煮は、しっかりした味付けにすると材料の1%の塩分がいわゆる「美味しい」味付けとなります。
教科書通りに肉じゃがを作ったとして、一人分の材料の総重量が200gなら1gの塩分量を使います。お醤油(私は関東なので濃口醤油)だけなら小さじ1杯分ということになりますね。
私が普段使っている栄養アプリの肉じゃがで1.4g。でも、レシピによっては一人分で3.3gにもなるものもあります。
一度教科書通りに重量の1%で作ってみて、薄いと感じるかどうか、試してみましょう。
塩味を減らして美味しいご飯を作るには”うま味成分”
もし、薄いな~と感じる場合、うま味調味料を使うという奥の手もあります。
メーカーによって多少の差はありますが、だしの素1gで塩分量0.4g、小さじ1杯で塩分量1.2gくらいのようです。お塩の半分以下の塩分なのに、うまみと合わさってとてもしっかりとした味になります。
どうしても塩分量を減らせない方にはお勧めの方法です。時短料理にも持って来い♪
最後に、、、
高血圧は成人日本人の約半数が罹っている病気です。軽く見られがちですが、放置すれば動脈硬化を起こし、やがて脳卒中や心筋梗塞など生命予後に関わる深刻な状態を引き起こします。また、腎臓にも過大な負荷をかけるので、慢性腎臓病の引き金にもなります。
この高血圧のコントロールに重要な役割を果たすものが塩分なのです。 スタートはいつでもOK。できるだけ早く薄味に慣れるようにしたいものです。
<ライターProfile>
name:あんとん先生
とある管理栄養士
ある時はあん摩マッサージ指圧師
食と運動と手技療法の3本柱でフレイル予防を提唱している
ちなみに”あんとん”は飼っている猫の名前