<インタビュー:はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師 川井大輔先生> 政治×鍼灸

“政治×鍼灸zoom”というオンラインコミュニティをご存知だろうか?

「若者の政治離れ」や「政治不信」という言葉がよく聞かれるようになって久しいが、実は自分の暮らしと政治は身近な関係にあることに気づいている人はどのくらいいるだろうか。

「あはき業界と政治の関わりだけでなく、自分の身近な暮らしと政治が関わり合っていることを知り、もっと政治に興味・関心を持たなければならない」と危機感を募らせる発起人の川井大輔先生。

鍼灸マッサージ師でもある川井先生に、政治×鍼灸zoomの活動について伺った。

<話し手 Profile>
川井大輔(かわい だいすけ)

川井治療院院長
東洋医療専門学校卒業
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師
東京都鍼灸師会ヘルスケア担当理事
臨床のみならず業団での活動も精力的に注力。想いを共有する仲間たちと2020年に『政治×鍼灸zoom』を立ち上げる。

AHAKI BASEの川井先生紹介ページはこちら
https://ahaki-base.com/therapist/daisuke_kawai/

政治×鍼灸zoomとは??

ー 政治×鍼灸zoomの活動内容を教えて下さい

川井先生
政治家や、あはき業界の中で業団活動をされてきた先生などを交互にお招きし、セミナーと意見交換を行う双方向性のオンラインコミュニティです。講師の方に一方的にお話をして頂くのではなく、ゲストスピーカーと聴講者が立場を同じくして意見を共有するというやり方です。
政治という場は、一方が聞いているだけではなく、双方から意見を出し合って擦り合わせて落とし所を探っていかなければならない。我々、一人一人が有権者なのですからそれぞれの意見を出す場であるべきと考えています。

ー 自分が知らない世界や事柄に関して意見を述べるという事は少し難しくもありますよね

川井先生
そうなんです。政治×鍼灸は意見を聞くだけではなく、自分も意見を述べなきゃいけないのでその部分ではよりハードルが高い(笑)
この企画を始めてから分かったことですが、我々あはき師自体があはき業界のことを知らないということです。政治家に何かを意見を共有しようと思っても、意見が出てこないんですよね。坂部先生1)がよく仰っていますが、自分達が自分達のことをよく知らずに他人に説明できるわけがないんです。
だから、政治家を招く時は自分達のことをわかっていないと話にならない。その為に業界団体のことを深く知るためのゲストを呼び、自分達の理解を深めることと政治についての理解を深めることを交互に行なっています。

1)坂部昌明先生。特定非営利活動法人ミライディア理事、明治国際鍼灸大学非常勤講師。当サイトでもインタビューコラム「あはきが社会の一部であるために」を掲載。政治×鍼灸zoomでもゲストスピーカーとして招かれている。

ー 活動のきっかけについて教えて下さい

川井先生
きっかけは墨田区議である佐藤篤議員2)との出会いでした。2018年頃、墨田区の介護連携会議で佐藤区議と知り合い、「この方は区民の話を丁寧に聞いてくれる」と感じたんです。
ちょうどその頃から、選挙の投票率が低いとか国民が政治に対して関心を持ちづらいとか、問題だと思っていて、どうしたら変わるのかな、自分にできることは何かなと。鍼灸全然関係なく、いろんな所の団体や勉強会・講演会に参加していたんですね。やっぱり自分の周りの友人たちも政治には関心がない。それで一度、佐藤区議に「固い話じゃなくて、お酒飲みながら、お菓子食べながらでも座談会しませんか?」と相談した所、快諾してくれたんです。
そして友人15~6人くらいを集めて、座談会を開きました。で、佐藤区議にどんどん質問していく。当時は北朝鮮のミサイル問題や、もしも首都直下型地震が起こったらとか、下世話な話もあったし、区政だけじゃなくていろんな話をして、言わば飲み会でした。佐藤区議とは二次会まで行って、飲んで、打ち解けて。佐藤区議、お酒強いんですよ(笑)
その後も別のメンバーでもう1回やりました。友人なんかは佐藤区議に区民相談とかするようになりましたので、少しは政治や行政に関心を持ってもらえたんじゃないかと思います。

2)佐藤あつし墨田区議会議員。墨田区議会自由民主党幹事長、政治×鍼灸zoomの第1回ゲストスピーカー。
公式ホームページ:https://www.satoatujp.com/

業界団体と政治について

ー きっかけは地元からスタートしたんですね。そこからあはき業界へと発展していった。

川井先生
日本全体が政治に関心がない状況ですが、自分が業団の中で政治に関わるようになって、あはき業界の政治への関心の無さがより低く感じられ、危機感を持ちました。業団に入っていても入っていなくても、あはき業界と政治がどのように関わっているか知らない人がほとんどで、(あはき業界の)政治連盟として活動している一部の人しかわからないです。それではますます興味がなくなってしまう。それで、佐藤さんに「今度、あはき業界verで座談会しませんか?」と言ってみたんです。そしたら「いいですよ、やりましょう」と。もちろん、佐藤区議は鍼灸マッサージの話はわからないだろうけど、「業界団体と政治家の繋がり」については話ができると思っていました。

ー 業界団体と政治のつながりはなかなか知る機会がないし、ネガティブなイメージがついていることが多い気がします

川井先生
基本的には政治家と業界団体は繋がりがあります。国民の中には利権とかコントロールしているとかマイナスなイメージがありますが、「その業種の悩み事を政治家に相談する」というだけです。金銭のやり取りが発生するシチュエーションもあるのかもしれませんが、ほとんどの団体はそんなことできません。
佐藤区議自身も、ご自身の業でもある行政書士会や薬剤師会などと繋がりがあります。全然鍼灸とは関係ないけど、業界団体と政治家の在り方ということを話して下さいました。

組織力、政治力がないと言われる”あはき”業界

ー 政治×鍼灸zoomは「あはき業界団体と政治をつなげよう」という意図よりも、多くの人に政治への興味・関心を持ってもらうという意図の方が強かったのですね

川井先生
“業団に入ってもらう”という意図はなくて、まずは業団が何をしているのか、あはき業界団体と政治がどう繋がっているのかを正しく理解してもらう為の第一回でした。時々SNSでも「あはき業界は政治力がない」とか言われますけど、解像度の高い説明をできる人は少ないのではないでしょうか。
政治家の仕事の一つは業界団体からの要望を正しく聞き取って、政治に反映させること。国民の利益にならない時は修正する。佐藤区議にはそのプロセスを説明してもらいましたが、その際に出た話題が職域・職際問題でした。
弁護士・行政書士・司法書士の間にも存在する業務範囲の問題ですが我々もモロにありますよね。あはき・柔整・理学療法・無免許整体、彼らと鎬を削っていかなければならない。そんな状況の中で、我々が何を考えているのかしっかりと政治家へ伝えていく。それが業団の意味。職域を守る。間接民主主義の日本ですから、民意は数なんです。個人では届かない声も業団という組織になることで大きな声になる。
「組織力」とはそういう所だと思います。鍼灸マッサージ師って登録者数で50万人程かと思いますが、個々で声を上げても国には届かないし、ましてや地域行政にも届かない。全日本鍼灸マッサージ師会(以下、全鍼)の会員は約10,000人、日本鍼灸師会(以下、日鍼)は約4,700人です。単純に考えても10分の1の人も加入してない。組織としての声も小さくなってしまいます。
全鍼や日鍼のような全国組織は国と折衝する、東京都はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師会や東京都鍼灸師会のような都道府県組織は都道府県と折衝する、さらに各市区町村の会は施術所のある地域行政と折衝する。折衝する上で、数は民意ですから会員数が多い方がいいし、それが組織力になるのではないでしょうか。

ー 業界として政治活動をするのは業団ではなく、政治連盟なんですよね

川井先生
業界団体は特定の政党や政治家を応援してはいけないので、政治連盟という別組織で応援・活動するという形になっています。東京都鍼灸師会には東京都鍼灸師連盟が、日鍼にも日本鍼灸師連盟があります。全鍼にも政治連盟があり、「鍼灸マッサージを考える国会議員の会」を通じて、働きかけをおこなっています。現状では、業団に加入していなければ政治連盟に加入することはできません。

ー 政治活動を行う為の”政治連盟”があることを知らないあはき師も多いと思います。

川井先生
第1回目では佐藤さんにその辺りのことも話してもらっています。しかしながら、そもそも政治に興味がないですから、政治連盟云々の段階でもないんですよね。あはきの為に誰が一番汗をかいてくれそうか、という視点で政治家を見るのも大切かと思います。政治連盟は基本的には与党と付き合います。我々の政治×鍼灸zoomは与野党、無所属関わらずいろんな人の話を聞くというスタンスです。

あはき師の政治への興味・関心を引き出し、政治参画を促したい

ー ほとんどの国民と同様に、あはき師も政治と自分の暮らしがどのように結びつくのかが実感できない為に政治への興味・関心がなくなっているように思います。

川井先生
そう、実感がない。でも本当に影響がないのでしょうか?広告検討会だってあるし、政策や立法に携わるのは政治家ですから、想像を働かせればある程度関係があるという事はわかるはず。例えば看護師などは看護政策についての本があります。政治と看護がどのように関わるかが監修されたものがあります。PTもなぜ政治が必要かをしっかりと業団で教えています。医師は当然、政治の必要性を認識・理解しています。どこに働きかければ自分達の地位や権力を保てるかと肌感覚でわかっている人種でしょう。PTや看護師は、同年代の人でも自分の仕事や業界に対しての考えを持っています。

ー 安定しているからこそ自分の立ち位置を守る為に政治を利用しようという考えができるのかもしれません。我々も大局で業界を考える必要がありますね。

川井先生
その視点がない・わからないからこそ政治×鍼灸zoomで情報を共有したいのです。お陰様で毎回50~60名程度、前回は80名近くの方が参加してくれました。政治に関するイベントで40~50人集められる企画は滅多にないようです。それだけ政治というワードに苦手意識があるようです。わからないから聞いても仕方ない、的な。そういう意味では少し政治に対する関心を引き上げられたのではないかなと。

ー 政治に興味・関心を持った方がいいと思っている人がいたとしてもどうやって参画したらいいのかわからなかったのかもしれませんね。そのきっかけ・入口になったのではないでしょうか

川井先生
コアな人たちは業団に入会している方が多いですが、患者さんとして参加してくれる人もいらっしゃいます。時には患者さんのご家族がご意見を述べてくれる(笑)。そのように政治サイドだけでも鍼灸サイドだけでもない、患者サイドからも意見が出てくる。これが政治×鍼灸zoomの醍醐味かもしれません。

ー この活動を通じて実現したいことは何でしょう?

川井先生
最終的なゴールとしては「あはき師から政治家を出す」ことが理想です。この企画をやることで興味を持ってくれて、さらに名乗りをあげてくれる。そこが理想ですね。

政治参画の第一歩は、まずは身近な地域から

ー 政治×鍼灸zoomに参加していない人でも、政治に興味関心を持たなくてはいけないな・参画してなくてはいけないなという意識を持っているあはき師もまだまだ潜在していると思います。そのような人たちが一歩踏み出すにはどうしたらいいでしょうか?

川井先生
まずは政治×鍼灸zoomに参加してくれればいいなと思いますが、地域議員さんの区政報告会などに参加するのもいいと思います。地域の問題は自分の生活に直結します。地域の政治と自分の生活が関わらずに生きていくことはできないはず。区の助成金や保育園、税金もそうです。まずは自分の地域の政治家で、若い議員さんと繋がってみるのがいいと思います。政治は与えられるものではなく、自分から参加していくもの。「僕たち、私たちの政治」なんです。その入り口としての政治×鍼灸zoomです。

ー 政治をもっと自分ごととして捉えることですね

川井先生
我々の意見が政治家の意見になる。意味がないなんてことはない。もちろん、いきなり国会議員や総理大臣に何か言いたいとかは意味がない。順番が違う。みんな政治家=国会議員で考えすぎ。我々の生活を考えるのあれば、住んでいる地域から選ばれ、住んでいる地域の政治を担う市区町村議員にあはき関係なく、住んでいて感じる問題点や疑問点をぶつけていくのが一番近いのではないでしょうか。

自分の家庭・仕事・業界など、実は政治って関わらざるを得ないと思えました。「暮らしと政治が結びついている」と考え直さなければなりませんね。

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