訪問マッサージや訪問鍼灸と同意書

健康保険適用での利用に必要となる医師の同意書

患者が、はり、きゅう又はあん摩マッサージ指圧の施術を受け、その施術について療養費の支給を受けるためには、あらかじめ保険医(=健康保険証を使える病院のお医者さん)から同意書の交付を受ける必要があります。

訪問マッサージや訪問鍼灸では、ほとんどの患者がこの『同意書』を取得し、健康保険(療養費)を使った施術を受けています。

保険医が交付する同意書は、保険者(=国民健康保険なら各市区町村・社会保険なら各組合など)が、はり、きゅう又はあん摩マッサージ指圧の施術が療養費の支給対象に当たるかどうかを判断するために重要であるとともに、施術を必要とする患者が適切に施術を受けられるようにするためにも重要です。

この記事にたどりついた方の中では「同意書は取りにくい」などの噂を耳にして心配になっていらっしゃる方も多いかと思います。

本当に同意書は取りにくいのでしょうか。もちろんかならず交付していただけるというのは難しいですが、同意書は正しく依頼することによって医師の理解を得ることができます。

では、どういうところを意識していけばいいのでしょうか。

まずは、同意書について知ることから始めましょう。

同意書ってどんなもの?

マッサージの同意書について

マッサージの同意書はこのように両面印刷で2頁になっています。

①患者情報

保険証に記載されている情報と同一のものを記載します。

②傷病名

現在罹患している病名や怪我の名前、特に筋麻痺・筋委縮・関節拘縮の原因となっていると考えられる医師が診断した傷病

③発病年月日

傷病名に記載された傷病の発病の年月日で、「〇年〇月ごろ」や詳細が分からない場合は「不詳」と記される。

④同意区分

患者が過去に他の保険医療機関で同意を受けている場合であっても、同意書を交付する保険医療機関で同意する疾病の初回の同意となる場合には、「初回の同意」となります。

・過去に同意書を発行した保険医療機関で、同意書の疾病が治癒した後、新たな疾病または再発した疾病について同意書を発行する場合、「初回の同意」となります。

・複数の保険医が勤務する保険医療機関で引き続き同一疾病について同意書を発行する場合、初めて患者を診察する保険医が同意書を発行する場合であっても「再同意」です。

⑤診察日

直近の診察を受けた日

⑥症状

あん摩マッサージ指圧師の施術について療養費の支給対象となる適応症は、一律にその診断名によることなく、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮等、医療上マッサージを必要とする症例です。

例えば、筋麻痺、片麻痺に代表されるような麻痺の緩解措置としての医療マッサージ、あるいは、関節拘縮や筋萎縮が起こり、その制限されている関節可動域の拡大を促し症状の改善を図る変形の矯正を目的とした医療マッサージ(四肢の6大関節への変形徒手矯正術)などが支給対象となります。

また、脳出血による片麻痺、神経麻痺、神経痛などの症例に対しても保険医の同意により必要性が認められる場合は療養費の支給対象となります。

単に疲労回復や慰安を目的としたものや、疾病予防のマッサージ等は療養費の支給対象とはなりません

「その他」欄は、1段目又は2段目の筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮以外の医療上マッサージを必要とする症状がある場合、当該症状と該当する部位(部位が特定できる場合)を記載していただきます。
また、「症状」欄の部位と「施術の種類・施術部位」欄の部位が異なり、「症状」欄の部位以外への施術が必要な場合には、「その他」欄にその施術が必要な理由を記載されます。

⑦施術の種類と施術部位

施術の種類はマッサージか変形徒手矯正術です。

マッサージは躯幹・右上肢・左上肢・右下肢・左下肢の5部位に人体を分け、医師が診断したうえで筋麻痺や筋委縮、関節拘縮がある部位に対して〇をつけます。

変形徒手矯正術とは関節の可動域を改善する目的で行われる手技のことを言います。

四肢の6大関節(肩・肘・膝)のみならず、股関節や手首・手指に拘縮などがある場合に用いられます。

⑧往療

医療でいうところの往診にあたいする言葉で、お住まいなどに訪問して施術をする場合で下記※のような状況の場合に1.必要とするに〇をつけでもらいます。

加えて、必要とする理由にも印が必要です。

※往療が必要な状況とは、患者が疾病や負傷のため自宅で静養している等、外出等が制限されている状況

例えば、患者が独歩による公共交通機関を使用した保険医療機関や施術所への通院や通所が困難な状況(付き添い等の補助が必要、歩行が不自由であるためタクシー等の使用が必要等)であるか否か、患者が認知症や視覚、内部、精神障害などにより単独での外出が困難な状況(全盲の患者や認知症の患者等、歩行は可能であっても患者自身での行動が著しく制限されている、循環器系疾患のため在宅療養中で医師の指示等により外出等が制限されている等)であるか否か、介護保険の要介護度や他職種との連携状況等を踏まえ、往療に関する同意が行われます。

上記⑦⑧については料金に関わることですので、施術師や患者から医師に対して患者の体の状態を漏れなく伝える必要があるところです。

患者が十分に理解できるよう施術師はきちんと説明をしましょう。

⑨注意事項

通常「同意書」の有効期限は「要加療期間」と言われ、初回の同意の日を基準に6カ月前後です。(変形徒手矯正術を受けている患者が、1ヶ月を超えて引き続き変形徒手矯正術を受けようとする場合も、再度、同意書の交付を受ける必要があります。)

が、特に医師が要加療期間を設ける場合はここに記載されます。(既定の6カ月前後の期間以上になることはありません。)

また、マッサージを行う上での注意事項がある場合もこちらに記載されます。

⑩署名欄

同意をした日(診察日以後のマッサージを同意した日)が記入され、要加療期間の基準日となります。

保険医療機関及び保険医による記名押印または署名を書いていただきます。

同意書に訂正がある場合、証明欄が記名押印の時は二重線+押印で訂正をしていただき、署名の場合は二重線+署名で訂正していただきます。

はりきゅうの同意書について

マッサージの同意書と同様に両面印刷で2頁になっています。

①患者情報

保険証に記載されている情報と同一のものを記載します。

②病名

はりきゅうの健康保険(療養費)の支給対象となる疾病は、慢性病(慢性的な疼痛を主訴とする疾病)であって保険医による適当な治療手段のないものです。

具体的には、神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症(6疾病)について、保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、保険者は保険医による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないものとされています。

なので、同一疾患で他の保険医の受診と併用はできません。受診日のみならず投薬がある場合は投薬期間も併用できません。

6疾病でなくても6疾病と同一範ちゅうと認められる疾病である場合、慢性的な疼痛を主症とする疾患である場合に同意を受けることも可能で、同意書の「病名」欄の「7.その他」に病名を記入していただきます。

療養の支給にあたいするかどうかは保険者の判断となります。
以下の項目については、マッサージの同意書と同様ですので、上記をご確認ください。

同意書を医師に依頼するときの注意点

訪問マッサージを利用するときの流れ

一般的に訪問マッサージや訪問鍼灸を利用する場合、ほとんどの業者で下記のような手順で進みます。

マッサージや鍼灸の施術所へ問い合わせ

無料体験施術

今後の治療プランや訪問マッサージ・訪問鍼灸の制度について説明をうける

同意書の依頼

同意書取得後、定期訪問

とくに、治療プランや制度についての説明をしっかりと理解していただくことが重要です。

ここで、施術師と患者様の意思疎通がしっかりとなされていれば、同意書を交付していただける可能性はぐっと高まります。

患者や患者家族と施術師で同意書取得の意味を共有する

訪問マッサージや訪問鍼灸を利用される方に、なぜ同意書の取得が必要であるのかをお伝えしておかないと、患者がよくわからないままに同意書申請をしてしまうことになり、同意書を交付していただけない可能性が高まります。

患者の多くは高齢で、介護サービスを受けている方です。

なかなか現状を伝えられなかったり、質問に答えられなかったりして、同意書取得をあきらめてしまう方も多いです。

また、ご家族が受診に付き添う場合はご家族もきちんと理解していないと患者の状況を医師に正しく伝えることができません。

加えて、施術師も依頼状に患者から聞いた情報や自分の見立て(診断にあたるようなことは一切書かない)・治療プランを依頼状に書いてお渡しします。
医師に同意書を依頼する際はかならず施術師に相談しましょう。

ここだけの話、同意書交付を断られる場合

東洋医学やマッサージ治療・鍼灸治療に対する考え方は医師により様々です。
また地域により対応が大きく異なるのが現状です。

各業界団体はそれらが少しでも是正されるように動いています。

医師の中には「患者の疾病や症状によって同意書を交付する先生」と「疾病や症状に関係なく交付しないと決めている先生」がいます。
後者の場合は残念ながら門前払いとなり、こちらの理解や努力は届きません。
その場合はセカンドオピニオンをお勧めいたします。

セカンドオピニオンとは、患者さんが納得のいく治療法を選択することができるように、治療の進行状況、次の段階の治療選択などについて、現在診療を受けている担当医とは別に、違う医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです。

東洋医学やマッサージ・鍼灸の効果効能に知見を持つ先生も必ずいらっしゃいますので、担当の施術師にお尋ねください。

医師の同意書の交付を受けるにあたって疑問や不安は解消されましたでしょうか?

通院が困難で痛みや麻痺、関節可動域の著しい低下にお困りの方に少しでも楽になってもらうことができたらと祈っています。

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