起き上がれないレベルのめまいを訪問鍼灸で治療

 私は自律神経の乱れによるめまいで、なかなか体が動かない時期がありました。そんな事情で実家に帰省していたある日、体が動かないどころか、ベッドから起き上がれない状態になってしまったのです。当時は自律神経について無知で、さらに言えば鍼灸自体、あまり信用しておらず、鍼灸で治るとは思っていませんでした。

両親は鍼灸が好きで、2週に一度位程、車で30分かけて鍼灸治療に通っており、とても効くと喜んでいました。ベッドから起き上がれない私を見かねた両親が、鍼灸を勧めてきました。ここまで来ると藁をもすがるという思いで、鍼灸に行くことを了承したのですが、本当にめまいがひどいので車でも治療院まで行くのは困難な状態でした。
 すると両親は、知らない間に鍼灸治療院の先生に連絡を取っており、治療時間外に自宅に来て治療してくださることになりました。とても大袈裟で恥ずかしいという思いと、それで少しでも治る可能性があるなら早く治療して頂きたいという思いが交錯していました。

優しい心遣いに涙、魂の治療

夕方、先生が自宅に来られ、私の顔を見るなり「どうしてこうなっちゃった?」と聞かれました。当時、結婚によるストレスでどんどん体調が悪くなっていたので「結婚後、体調が悪くて」と言葉に詰まったら、「そうだね、慣れない土地で友達もいなくて大変だもんね。よく頑張ったんだね」と言ってくださり、それだけで泣けました。詳細は聞かれませんでしたが、多大なストレスがかかっているのを察知されたのだと思います。優しい心遣いも嬉しくて余計に涙が出ました。

 体調については「今、何が一番つらい?」と聞かれ、「頭が無重力のような感じで起き上がれないから、家事も何もできない」と言いました。先生は「そうだねぇ、無理する時じゃないね」と言って、脈をとりました。目を閉じて難しい顔でしばらく黙っていた先生。次に「舌を見せて」と言われ、舌の表と裏、両方を見て写真に撮られました。いわゆる脈診舌診という東洋医学の診方です。この頃には先生のやる事に興味津々で、自然と涙は止まっていました。
 次にお腹の触診です。いろんなポイントを押したり軽く叩いたりして診ておられました。背後診と言われる背中のチェックや、足の脈も診られ、全身くまなくチェックがありました。「体も冷えきっちゃってるし、元気がないね。自律神経も乱れている、ちょっと針やお灸するから、痛かったり熱かったりしたら言って」と言われ、治療に入りました。治療中の先生のお顔、失礼ながら怖い位でしたが、魂を込めて真剣に治療してくださってるのが分かりました。鍼灸とは縁遠かった私ですが、なぜか根拠もなく「これで治る」と思っていました。針は痛くないし、お腹のお灸はほんわかと温かく、気付いたら寝ていました。しばらく快眠がなかったので、知らない間に寝てしまうのは本当に気持ちよかったです。

別人になった気分

 治療が終わった頃になんとなく目覚め、「どう?」と聞かれました。何とも言えない気持ち良い感覚で「もう自宅に戻る」と立ち上がってしまいました。さすがにまだ無理と止められましたが、治療後の別人ぶりに自分で驚きました。その後は現状の説明と、今後可能であれば治療に通った方が良いとの事で、両親と一緒にしばらく鍼灸に通う事にしました。
 毎回、治療後は元気で別人ですが、しばらく時間が経つとまためまいや疲れでグッタリしていました。しかし治療を重ねる毎に確実に体調の良い時間が増えていきました。先生には「焦らず、焦らず」と言われ、週1で鍼灸に通ったら、3か月で元の生活に戻れました。3か月と聞くと長いようですが、起き上がれない程ひどいめまいから起き上がれるようになるまでは1時間の治療だったので、私の中では驚異的でした。その後、妊娠、出産もしましたが、今では疲れながらも倒れることなく育児が出来ています。

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