訪問施術体験

元気だった母の思いがけない怪我

 2009年7月、実家に住む母から「階段から落ちて、腰椎を圧迫骨折した」と連絡があった。当時、娘の私は大学4回生。京都で一人暮らしをしており、就職活動に修士論文、さらには資格取得のための授業と忙しい日々を送っていたのが、その連絡を受けたときには心底驚いた。 しかし実家は関東で、すぐに帰れる距離ではない。心配ではあったが、入院治療は必要なくコルセットで固定し、自宅療養していること、母からも「少し動きにくいけれど、日常生活に影響はない」と言われたため、その後はこまめに連絡をいれ、京都から励ますことに徹した。

 電話で改めて話を聞くと、しばらくは自宅でも安静を強いられ、最低限の家事しかできなかったため、父は大変だったようだ。母は昔からフットワークが軽く、京都にもよく遊びに来ていたし、趣味から繋がった友人と良好や食事に行くことも好きなアクティブな人だ。これまで大きな病気もしたことがなかったため、今回の怪我は母だけでなく家族にとっても初めての経験だった。

 このような状況になり、ちょっとは落ち込むかと思ったが、電話で話す限りはいつも通りの母。持ち前の明るい性格が影響したのか回復は早く、2週間程でコルセットをつけたままであるが、車の運転や買い物等ができるようになり、少しずつ身の回りのこともできるようになった。結局コルセットは2ヶ月で外れ、その後はモーラステープを貼りながら過ごした結果、11月末に治療が終了した。

帰省と母の治療

 年末に実家へ帰省すると、いつもと変わらない元気の母の姿にほっとした。電話では定期的に話をしていたが、直接会えたのは怪我をして以来初めてだったため、心配が尽きなかったのだ。
 腰椎骨折したところは特に支障ないとの話だったが、天気が悪いときには痛みが出るとのこと。帰省した年末は雨が降る日が続いていたこともあり、痛みがいつもより強いと話していたため、昔からの知り合いの鍼灸院に相談の電話をした。馴染みの鍼灸師が電話に出てくれ、状況を話すと自宅に行くと言ってくれた。

 その日の午後、50代の女性鍼灸師が来た。世間話をしながらリビングに入ってもらい、母は長座布団の上にうつ伏せで横になった。鍼治療をすることで固まった筋肉や関節が柔らかくなり腰への負担が減ることで腰痛の緩和に繋がると説明してくれた。
 その後、肩の辺りから腰にかけて等間隔に鍼を8本ほど打つ。昔から鍼治療は受けていたものの、骨折後に鍼を打つのは初めてだったため、母から緊張している様子を感じられた。

 しばらく鍼を置き、外してもらった。「お灸で身体を温めると楽になるよ」とのことだったので、背中に2つお灸を載せてもらった。直接肌に乗せるタイプではなかったため心地よい温かさのおかげか、母はウトウトと眠り始めた。私自身も過去に鍼灸治療の経験があったため、お灸には馴染みがあり、久々の香りに癒された。5分ほどでお灸も終わり外してもらった。

 母が目を覚まして身体を起こすと、施術前よりも背筋が伸びているのが私でもわかった。「鍼灸治療をして、いまは背中の筋肉の緊張が取れて重心が揃っている。腰への負担は腹筋背筋を鍛えることで緩和されるから、無理のない範囲で定期的な運動をすると良いかな。筋肉をつけていかないと腰も曲がりやすくなるから。」と鍼灸師が話してくれた。母もこの治療のおかげで、腰の痛みが緩和されたようだ。「久々に受けたけど、体がすっきりしたわ。腰の痛みも楽になったし、体が軽くなったように感じる。」と笑顔で話していた。鍼灸治療のおかげで不調が解消され、良い新年を迎えることができたことも娘として嬉しかった。

その後の母の様子

 年が明け、私は京都へ戻った。しばらくして母から「スポーツジムに通い始めた。」と連絡があった。最初は腰のこともあったためマシンを使って短時間の運動をしていたそう。あれから10年が経ち、今ではスタジオプログラムもバリバリこなし、ますます若々しい母に進化している。なかなか会えないが、いつまでも元気な母でいて欲しいと心から思う。

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